yumegakureblogの日記

日日是好日…のたりのたりかな

紫野綺譚外伝その3 [MURASAKINO]     帰還


これはバーチャル世界🌍️の
お話です。

          ☆     ☆     ☆
有名な脳外科医の
ドクター白神は
会議の為に渡米した後、
行方不明となった。

しかし、
それから3ヶ月後
日本国内の彼の住まいの
最寄り駅のホームの椅子に
座っている所を発見され
保護された。

しかし、
行方不明の間の詳細を
家族や警察が
何度も確認しようとしたが、
その間の記憶だけは
どうしても
ドクター白神には
思い出すことは出来なかった。
          ☆      ☆

三田直次郎(みたなおじろう)は
見たこともないような
まぶしい場所にいた。

ぼんやりとした頭で
薄目がちに目を開けたが
余りの明るさに
再び、目を閉じると
深い眠り落ちていった。

ひょっとしたら
もはやこの世ではないのかも
知れない❗

現実なのか
夢なのか
良くわからない朦朧とした
意識の世界の中で
直次郎は彷徨続けていた。


直次郎は
自分の古い記憶の中に
再び立っていた。

主君として仕えるようになり
少しでも斉彬を守る為に
剣術の稽古を始めようした。

それで、時間があれば
府内の数々の
剣術の稽古場を見て歩いた。

結局、
一番剣術を分かりやすく
教えてくれそうな
神田お玉ヶ池の
千葉道場玄武館
通うことに決めた。

斉彬に相談すると
千葉道場の玄武館なら
それも良かろう❗
直次郎は別に薩摩藩だけに
染まることはない❗
そのうちに、
他藩の仲間の繋がりも
必要な時が来るはずだから、
剣術以外にも役に立つ
千葉道場なら良いだろう❗
と快く了解してもらえた。

神田お玉ヶ池の
千葉道場玄武館
創始者千葉周作が開き、
北辰一刀流を教えていた。

この道場には
侍だけでなく、
町人などにも
剣術を教えていた。

その為、
誰にも理解し易くする為に
合理的な稽古方法で教え、
初心者には非常に
分かりやすかった。

それゆえに
それだに多くの人が道場に
集まって来ており、
当時の江戸府内では
一番人気の剣術道場であった。

この道場に
数年通っていると直次郎も
人並みに
そこそこ腕が上がってきた。

ある日、道場へ行くと
周作から
直接、所用の依頼があり
道場へ行くように頼まれた。

定吉の開いた道場は
小千葉と呼ばれており、
桶屋町に道場を構えていた。

直次郎も
何度か出稽古で行った事があり
千葉定吉や息子の重太郎とも
顔馴染みになっていた。

道場に入ると
新人が入門したのか、
入門時に受ける3本試合が
行なわれていた。

どうやら、
田舎では免許皆伝の腕前らしく
重太郎が相手をしていた。

一本目、二本目は重太郎が
簡単に取った。

しかし、
三本目は雰囲気が一変し、
形勢が逆転した。
最後は重太郎は豪快なツキで
一本取られてしまった。

直次郎はその時
何とも言えない
不思議な気持ちになった。

最初からこういう戦いをすれば
簡単に試合に勝てたのに
一体、どういうことだろう⁉️

少なくとも
負けるにせよ…❗
勝つにせよ…❗
3本とも
試合の内容を変えながら
戦い続けたことは、
ある意味において
この男は
底知れなく
懐が深いという事でもあり、
直次郎は
この対戦相手に興味を持った。

千葉定吉への用が済んだ後に
重太郎にこの相手を紹介して
もらうことにした。

背丈の高い若い男だった。
名前を
と名乗った。

それ以来、
直次郎と龍馬は仲良くなり
朝まで飲み歩くような仲に
なっていった。


ドクター白神はベッドに
横たわる男の患者を
長い時間をかけ
MRI/MRA検査を含めた
頭の検診を終えた。

どうも記憶の機能の部分に
大きな問題点が
起きたようですね。

かなり強い外からの打撃を
この箇所に受けたようです。

この不具合な部分を
補うためには
この問題点の箇所を
人工頭脳に変えた方が
良いでしょう。

しかし、
その場合は
過去の記憶の一部が
欠落する可能性もあります。

なるべく早めに
手術を実施しないと
廃人になる
可能性もありますね。

ドクター白神は
横たわった男を横目で見ながら
と呼ばれる目の前の男に
検査結果を伝えた。

それでは
すぐさま、
手術にかかって下さい。
ドクター白神‼️

躊躇することなく、
白神に答えた。

直次郎は依然として
過去の長い記憶の中に
入ったままでいた。

龍馬と出会ってから
数年後。

病に倒れて他界してしまい、
その後、
西郷隆盛島流しになって
直次郎が
たった一人ぼっちになっていた
時期があった

江戸の三田藩邸での
直次郎は表向きは
いつも通りに
振る舞っていたが
内心は
今の薩摩藩体制に対して
憤怒の思いが溢れていた。

丁度、その頃、
幕府が上海に視察団を送ると
いう噂が出た。

この噂を聞いた直次郎は
これは良い機会だ❗
そう思って
五代友厚を誘って
その幕府の船に紛れ込み
上海へ向かった。

この使節団の大きな目的は
アヘン戦争後の中国上海を
観察する事であった。

上海の一部地域は
この戦争に負けた事により、
完全に
イギリス人に支配され、
そこでは
中国人は奴隷のように
扱われていた。

この上海で、
直次郎は
初めて西洋人を見たり、
西洋の言葉を聴いたり、
西洋の文化に触れりしていた。

アームストロング砲という
当時の最先端の
砲撃武器の試し打ちを見て
度肝を抜かれたりもした。

この破壊力を見た時、
自分が持っている力、
即ち、
斉彬に止められていた
狗吠(くはい)の秘術が
脳裡をよぎり
思わず、
身体に震えが走った。

いつ如何なる時でも
この秘術が使えるよう
準備だけはしておこう❗
この先、
何が起こるかわからない❗
この西洋人達が
日本を攻めてくる可能性も
大いにあり得る‼️
直次郎はそう思った。

既に、
直次郎に
二度と使うな❗
と命令した
斉彬はこの世に居なかった。

僅か2ヶ月間という
短い旅ではあったが、
気分的に
腐っていた直次郎にとっては、全てが新鮮であり
気分的に楽になっていた。

もう一つの理由は
この旅の最中に
少々やんちゃな人物と
知り合った事でもあった。

長州藩藩士ではあったが
その小さな枠を越えた度量を
持っていながらも
長州藩というものから
抜け出せない
何とも微妙な立ち位置にいた。

しかし、
本人は別にその事に
全く違和感は
感じておらず、
全ては長州藩主のためだ❗
と思い続けているようでも
あった。

日本に帰って来た頃に
連絡があり
土佐藩を脱藩した❗との
直次郎宛に手紙が届いた。

直次郎さんが
私に教えてくれた
人と人に
欲が働けば
必ず、
人と人を動かす事が出来る‼️
という事を
もう少し真剣に考えてみたい。
それを
実践する為に脱藩した。

しばらくは
長州藩と九州辺りを
見て歩くつもりでいる。

つきましては、
その責任の一部を
貴方に取って欲しい
と思っており、
旅の費用として
お金を
少々都合してくれませんか⁉️

いかにも龍馬らしいと
揺すり方ではないか❗
直次郎は
苦笑いをしながらも
お金を工面して送ってやった。

その時の
返答の龍馬宛の手紙に
お金は
発送しておくので
彼の所に取りに行きなさい❗
と一言添えておいた。

更に、
早めに行かないと
彼に
お金を使われる可能性もある❗
とだけ付け加えておいた。

本当は
龍馬に
足を伸ばして薩摩藩にも
行って欲しかった。

帰藩した西郷隆盛にも
是非、会って欲しかったが、
まだその時期ではないと
直次郎は思っていた。

人の欲を
ギブアンドテイクさせたら
例えば
嫌いな者同士を
手を握らせる事が
出来るのだろうか⁉️

龍馬はその難題を解くために
わざわざ
旅をした後で
直次郎に会いにきた。

何とか薩摩藩の西郷と
長州藩の高杉を
説き伏せて欲しいと
直次郎に泣き付いてきたのだ。

薩摩藩は西郷が親分なので
直次郎は説き伏せ易かった。

しかし、
長州藩には親分といえる
存在が居なかった。
高杉にしても親分肌ではなく
書生の兄貴分であった。

それに高杉は
どうも身体の具合が悪くなり、
直次郎さん❗
私はどうも長くないらしい‼️

貴方の言う事は、同じ藩の
桂さんに言い含めておきます。
そう言って、
長州藩桂小五郎を直次郎に
紹介してくれた。

この秘密事を成功させる為に
表向きでは坂本龍馬が動き、
裏方では直次郎が動き回った。

やがて
西郷も桂も重い腰を上げた。

こうして
不可能と云われた
薩長同盟が成立し、
徳川幕府を倒し、
明治維新がなった。

ここまで
過去の流れが来た時に
直次郎の耳元に
三味線をひく
高杉の声が聴こえてきた。

三千世界の
烏(からす)を殺し
主(ぬし)と
朝寝がしてみたい…🎵

何度となく
高杉と飲みに明かして
この都々逸(どどいつ)を
聴いたことだろうか⁉️

高杉が俺を呼んでいるのか‼️

しかし、
その高杉の声も
直次郎の耳から
だんだんと
遠退いていった。


ドクター白神は
手術が無事に終わったことを
ミスターゼロワンに伝えた。

ドクター白神を
豪華な食事でもてなした。

その時に
手術代金として
何分割も細かく分けて
誰が見ても
わからないようにして
白神の口座へ金を送った
事を告げた。

食事をしながら、
これは何と読むのか
教えて欲しい❗

男が来ていた服に
書かれていた名前だ❗

そういうと
名前の入った
写真を白神に差し出した。

そこには
三田直次郎
と漢字で書かれていた。

さんた なおじろう❗
それとも、
みた なおじろう❗

白神の言葉を聞きながら、

日本語は読み方が
色々あって
難しいものだな❗

ミスターゼロワンは呟いた。

どちらにせよ❗
自分の名前など
きっと
彼は覚えてはいない
でしょうからね‼️

ドクター白神が
高級ワインを口にしながら、
笑いながら言った。

もうすぐ
お前も
同じようになるのだがな❗
心の中で呟いた。

ドクター白神が
たらふく
豪華な食事をして
高級なお酒を飲んで
熟睡した後で
ここで白神が行った事を
全て忘れる薬を
白神に注射した。

MNCが独自に開発した
最新薬であった。

それから
ドクター白神を
自家用の飛行機に乗せ
長い旅の後、
白神の住まいの
最寄り駅のホームのベンチに
彼を
置いてくるように
部下に指示をした。

          ☆     ☆     ☆

犯罪秘密組織MNCの中に
ひょっとしたら
時代を自由に
移動出来る人物が
いるのではないか…⁉️
という噂がたったのは
それから
三年も過ぎた頃だった。

噂によれば、
その人物は世間では
呼ばれているらしいと
いうことだった。

しかし、
この話に登場した
三田直次郎
であったかどうかは
いまだに
定かになっている訳ではない。

         (おわり)


ここまで
長い文章を
読んで頂きまして
ありがとうございます。
m(_ _)m