夢隠異聞 その6 [YUMEGAKURE] 交差点
アザレア。
普通のツツジよりも花びらが
豪華でボリュームがあります。
別名 西洋ツツジとも
オランダツツジとも言う。
(アザレアの花言葉)
節制
禁酒
恋の喜び
(白いアザレアの花言葉)
貴方に愛されて幸せ
満ち足りた心
充足
☆ ☆ ☆
宇都宮銀太が
最初に勤めたのは
都内にある会社であった。
通い始めて
5~6年に経っていた。
自宅から会社まで
通勤電車で乗り換えを含めて
約1時間余り。
満員電車が嫌いだったので、
電車が込み合う少し前の
時間帯の電車に乗り、
少し早目に着いて
会社近くの喫茶店に入る。
そこで、
モーニングを頼み、
コーヒーを飲みながら、
趣味の
スポーツ新聞の芸能欄を
隅から隅までじっくりと
読むのが日課だった。
その為に
いつも同じ時間帯の
電車に乗るようになっていた。
下車した後の乗り換えを考えると電車の乗車位置もほとんど
決まっていた。
何ヵ月か過ぎる頃には、
電車の中で毎日みる
同じ顔の人が
何人かいる事に気付いた。
オジサン、オバサン、
学生さん、
それに若い娘さんなど
名前は知らないけれど、
顔だけは知っていた。
宇都宮銀太は
紺色のジャケットに
いつもノーネクタイ。
それに、
リュックを背負っていた。
中肉中背の痩せ型の銀太には
両手が空いていた方が
何かと便利であった。
ノーネクタイなのは
どうもネクタイをすると、
首に圧迫感があり嫌だった。
喫茶店でネクタイを締めれば
済む事だと思っていた。
電車の座席には
座れる時もあれば、
座れない時もある。
しかし、
だんだん慣れて来ると、
途中の乗り換え駅で
必ず席から立ち上がり
下車する人を何人か見つけた。
電車に乗り込むと
最初にそういう人達が
何処に座っているかを見極めて
彼等の座っている前に
立つようにしてみた。
そうすると、
必ず100%の確立で座れた。
しかし、ある日、
自分と同じ事に気付いて
同じ事をやっているのではないかという人に気付いた。
その人は若い女性であった。
髪はショートカットの
ハッキリした目鼻立ちの
スポーティーな感じの
美人であった。
銀太には、
見たところ
学生さんではないかな⁉️
そう思えた。
しかし、
高校生ではなさそうだし、
大学生が毎日朝早くの電車に
乗るはずはないので、
おそらく、
銀平と同じような
会社員かも知れないなどと
勝手に想像した。
それはさておき、
彼女に対しては親近感より先に
座席取りに関して
ライバル心が
あるのに気付いた。
彼女の方が一駅か二駅前に
乗車するようなので、
そういう意味では
銀太の方が
圧倒的に不利ではあった。
つまり途中駅で下車する
人の前に立つのは
彼女の方が断然有利であると
いう事だった。
しかし、
銀太の方が
若干途中駅で下車する人の
顔を多く覚えていた。
先ずは、
これは、5分の戦いだ‼️
と銀太は
思っていた。
それから、3ヶ月後。
電車に乗るといつも
彼女が立っている人の
前ではなく、
銀太がいつも立っている人の前に彼女が立っていた。
彼女が通常立っている人の
前には、既に他の人が
立っていたようだった。
銀太は口には出さなかったが、
やられた❗
と思った。
彼女は見てない振りをしながら
こっちの手の内をこっそりと
見ていた訳だ。
いや、そうではない❗
これは、
単なる偶然だろう❗
そうとも、思えた。
しかし、
その日以降、
度々、
こういう事が続いていた。
電車で座れるか、
座れないかは大きな差があると銀平は思っていた。
いくら体力があるといっても、
毎日の事だと疲れてしまう。
乗車口近くに立ち、
座席に座ってスヤスヤと
寝ている彼女の姿を見ながら、
何か対策はないだろうかと
銀太は考えいた。
しかし、
良い案は浮かばなかった。
平 優香里は
関西の大学を出て
東京で就職した。
優香里は、
地元の関西で就職しても
よかったのだけれど、
一生に一度くらいは
(花の都)と呼ばれる東京へ
住んでみたかったので、
親を説得し、東京へ出て来た。
平 優香里は学生時代から
ぺーさんと呼ばれていた。
ザツクバランな性格と
スポーティーな容姿から
名付けられた。
念のため、
林家ペーのイメージからでは
ありません。
しかし、
東京生活は
現実は自分の思い描いた世界
とはかなり違っていた。
入社して最初の2週間は、
一応新入社員として扱われた。
けれども、
1ヶ月を過ぎる頃には、
ほとんど、
帰宅時間は21時を超えていた。
いわゆる、残業が毎日続く生活になっていた。
そして、
優香里の心と身体の疲れが
ピークに達した頃。
毎朝、電車で後の駅から
乗車したのに、
必ず、座席に座っている男性を見つけた❗
何故いつも座れるのか⁉️
何かマジックでも
使っているのだろうか⁉️
優香里には
どうしても理解出来なかった。
優香里は
しばらくの間、
毎朝の電車の中で
その男性の様子を探って
見守る事にした。
そうすると
ある事に気付いた❗
途中駅で乗り換える時に
下車していく人の前に
いつも立っている事を❗
降りる人の前に立てば、
途中からは必ず座れる❗
理屈が分かれば、
簡単な事だった❗
後は、彼と同じように
真似すれば良いではないか🎵
彼がターゲットにしていた
人の顔を一人一人、
覚えれば済む事であった。
そのお陰で
朝の通勤時間帯に
ゆっくり座って、
優香里は寝る事が
できるようになった。
それから
しばらくしたある日。
優香里が
駅に着いて目を
開けて立ち上がろうとすると
目の前に男が立っていた。
あっ、
いつもお世話になっている
席取りの師匠だ❗
優香里は
その目の前の男と目があった。
その瞬間に
優香里は
今までの感謝の意味を込めて
ニコリと男性に微笑んだ。
男は
一瞬ビックリしたような
顔付きになった。
そして、
何かを言おうとしたが、
優香里の微笑みに答えてしまい
思わず、
ニッコリと
笑い返していた🎵
その男性の名前は
宇都宮銀太だった。
銀太の作戦としては、
彼女に対して
宣戦布告のつもりで
彼女の座っている席の前に
立ちはだかる❗
つもりでいた。
ところが、
彼が思いも寄らない
彼女の反撃を受けてしまった。
その時の
優香里のなんとも言えぬ
笑顔が可愛いかった為に
彼は彼女に一発で
撃沈されてしまった‼️
それから、
宇都宮銀太と平 優香里の
電車の中だけの
付き合いが始まった。
呼び名は
当然、
(師匠)と(ペーさん)であった。
優香里は
同僚の高円寺直美に
誘われて
山登りに出かけた。
何度も誘ってくる
直美の要求に
最初は
面倒だな❗
と思っていた。
ところが、
一度、山登ると
その達成感と不思議な快感が
忘れられなかった。
そして、
直美以上に
山登りにノメリ込んだのは
優香里の方であった。
その内に
直美に誘いを
断られたのをきっかけに、
一人で山へ登ったりもした。
ほとんど、
休みの日の土日のどちらかで
山登り事が続く
生活に変わっていった。
平日は電車の中で、
毎朝、師匠には逢うのだけれど
優香里は
山登りと残業の
疲れが出てしまい、
座席に座ると直ぐ熟睡する
ようになってしまっていた。
時たま、
師匠と会話をしたりするが、
優香里は
朝の通勤電車の中で
だんだんと
会話する気が薄れてきた。
やがて、
師匠と同じ電車に乗るのを
ためらうようになっていた。
一方、
宇都宮銀太は反対に
優香里に対する思い入れが
ピークに達していた。
食事への誘いや
映画でも行こうよ🎵
と誘ってみたが、
優香里の優先順位の一番目は
山登りとなっていたので、
銀太の要求はことごとく
断わられた。
その内に銀太は
どうやら、
彼女が付き合っている男と
山登りを二人で楽しんで
いるのではないか⁉️
と思い始めた。
そして、
以前よりも、
優香里が
銀太を避けているようで、
電車も乗車時間を
変えているのに気付いた。
これが
銀太の一方的な片思いだった
のかも知れなかった。
ただ、
最初の時の不意に見せた
優香里の溢れるばかりの
笑顔が
いつまでも銀太は
忘れられなかった。
しかし、
その頃に
銀太は地方への転勤を
命じられ移動した。
最後にもう一度
平 優香里と会いたい❗
と思ったが
それは叶わぬ夢に終わった。
優香里は
直美に山へ行こうよ🎵
と何度も誘ってみたが、
どうやら直美には最近
彼が出来たらしく、
今は、山よりも男よ🎶
と言って
相手にもしてくれない。
そして、
駄目押し気味に
優香里に言った。
優香里❗
山登りが趣味の彼を
作ればいいじゃないの‼️
そうすれば、
一緒に山登りが
出来るじゃないの🎶
一石二鳥よ🎵
私の彼に相談してみて
あげようか⁉️
誰か紹介して欲しいって🍀
直美にこう
ハッキリと言われると、
確かに、
それはそうだ❗
と思った。
その時に、
どういう訳か
優香里の頭に
師匠の顔が浮かんだ🎵
久しぶりに
師匠に会ってみようかな❗
そう思って
師匠の家に電話をかけたが
電話は繋がらなかった。
師匠からもらった名刺の会社に
電話をかけてみたが、
既に、
師匠は地方へ
転勤した後だった。
それから、数十年後。
優香里は
地元の大阪のある家に嫁いだ。
子供が小さい内は、
趣味の山登りを控えていた。
しかし、
育児のストレスや
仕事のストレスも
相当あったのか
やけに
気持ちが落ち着かず
旦那に山に登りたい❗
と口にした。
遠くは無理だが、
近場ならいいだろう‼️
と、旦那が許してくれた。
近場で
まだ登ったことはないのは
比叡山。
折角だから、
泊まり掛けで行っておいで🎶
一日ぐらいなら
子供の面倒はみておくから❗
そう言われたので、
優香里は
京都の大原に泊まる事にした。
泊まる宿は
大原で人気の高い
[美々 白百合旅館]に決めた❗
旅行会社や
雑誌の情報を調べてみると
この[美々 白百合旅館]の
お客さんの評価は高く、
各内容共に
ほとんど、
☆が5つ付いていた。
京都の奥座敷の大原で
美人の女将❗
係員の宿の接客態度、
清潔さ、
そして、料理とお風呂。
本当に、
ゆっくり出来て最高❗
そんなコメントが並んでいた。
今時、そんな素敵な宿って
本当にあるのかしら⁉️
優香里はそう思いながらも
[美々 白百合旅館]へ
予約を入れた。
当日、
平 優香里が白百合旅館へ
着いた頃は
夕方近くでロビーの中には、
本日の泊まり客が数人いた。
玄関に入ると
思ったよりは
若い女将らしい人が
直ぐに優香里に気付いて
近づいて来た。
ようこそ🎵
おいでやす。
お待ちしておりました。
女将の白百合薫です。
お客様は平 優香里さんで
いらしゃいますか⁉️
腰を折りながら、
優香里に言ったものだから、
ビックリしてしまった。
その様子に気付いて、
女将がニコニコしながら、
今日のお泊まりの中で、
女性お一人様のお客様は
平 様だけですから…🎶
どうぞ、
中へお入り下さい。
こちらの席で、
少し、お待ち下さい。
そう言い終わると
次々とロビーのお客さんを
係員に指示しながら
さばいていった。
係員も直ぐにその指示に従ってきびきび動いて、
次々とお客さんを部屋に
案内していた。
流石に旅館の評価が高い宿だ。
動きに無駄がない。
そう思って感心していると
優香里の座ったソファー前に
お茶と茶菓子が運ばれて来た。
その時、
ロビーの奥から、
女将の白百合薫の声がした。
菜子さん❗
お待ちどうさまでした‼️
銀太さーん❗
菜子さんとご主人様を
お部屋までのご案内、
宜しく
お願いしま~す🎵
そうそう、
ユイさんが作って
送ってくれた
美味しいスイカ🍉が
届いていますから、
後で部屋にお持ちしますね🎵
楽しみにしていて下さいね✨
するとそこに、
奥から頭の禿げた小太りの
中背の男性が現れた。
菜子さん❗
お久しぶりです🎵
この度は、
新婚旅行で当旅館に
お泊まり頂きまして、
誠にありがとうございます🎵
嬉しそうに男性が、
頭を下げながら
ニコニコして
お客さんに話かけていた。
この人達は
きっとこの宿の人達と
昔からの
知り合いの人なのだろうな🍀
遠目でその様子を見ていた
優香里は
その銀太と呼ばれた男性の
その彼の立ち姿を見ていて、
何を思ったか❗
急に目を細めて凝視し始めた。
あの姿は
何処かで見た事がある‼️
あの彼の立ち姿は‼️
もしや⁉️
ひょっとしたら、
かれこれ、
数十年前に毎日電車の中で
見ていた男性の姿と
同じではないのかしら⁉️
一瞬、目を疑った‼️
しかし、
見間違いはない‼️
多分、間違いないだろう‼️
あれは、宇都宮銀太さんだ‼️
師匠だ‼️
まさか、
此処の場所で
かって師匠と呼んだ
男性に会えるとは
予想もしなかった‼️
ただ、
あの頃と変わっていたのは、
頭の毛が少し無くなったのと
お腹が出た事だけだわ❗
優香里は驚愕の余り、
銀太から
目が離せなくなっていた‼️
銀太は
菜子と話ながらも
何か
背中に視線を感じていた。
荷物を持って
部屋に運ぶ時に
その視線の先を見た。
あっ❗
一瞬動作が止まり、
銀太が小さい声をあげた。
ひょっとしたら
あれは
ぺーさん
ではないか⁉️
あの頃よりは
少しばかり
くたびれた感じではあるが、
間違いなく
そうじゃないかな‼️
いや、
きっと、そうだろう‼️
銀太は確信した。
そこには
何の疑いもなく
銀太も
思いもよらない
優香里の姿があったのだ🍀
しかし、
今の銀太は直ぐに
気分を切り替えた。
動揺を見せようともせず、
白百合旅館の一人の顔になり、
菜子と菜子のご主人を
部屋に案内していった。
銀太の姿を確信した
優香里も
夢から覚めたように我に帰り、カウンターで
名前と住所を
記載し始めた。
外は
まだ、
夏の暑い風が吹いていた。
それは、
誰にも分からないような
瞬時の出来事だった。
しかし、
ただ一人女将の白百合薫は
二人が驚愕して
一瞬だけ
二人の心が揺れ動いた事に
気づいていた。
けれども、
時間が短すぎて
何故驚愕したかの理由までは
分からなかった。
なにせ、女将の薫には
心が読める力があった。
それが、
[美々 白百合旅館]が
何処にも引けを取らないような人気宿になった重要なポイントの一つでもあった。
お客さんの心を読み取り、
お客さんが喜ぶように
先々に手を打っていくのが、
[美々 白百合旅館]の
女将の薫のモットーだった。
そのお陰で、
トラブルが発生しても最小限で
食い止める事が出来た。
しかし、
この秘密を知っているのは、
旦那の銀太と娘だけだった。
面白いことに
いつもなら、
心が全く読めない
旦那の銀太の心の中に
一瞬だけ、
揺らぎのようなものが見えた‼️
気がした。
銀太が余程驚いて、
心のガードを思わず、
緩めてしまったのだろう❗
しかし、
流石に白百合旅館の裏看板の
旦那の銀太であり、
直ぐに心のガードを塞いで
しまった。
女将の白百合薫は思った。
今夜は、
銀太から詳細を
根掘り葉掘り
聞き出してやろう🎵
答え次第では
銀太に
意地悪をしてやろうかしら🎵
普段、
銀太に出来ないイタズラが
出来そうな気になり、
女将の白百合薫は、
嬉しくなってきた🎶
さて、
どうやって
何から聞き出そうかしら⁉️
銀太の慌てる姿を想像すると
可笑しくてたまらない🎵
そんな風に思っている事は
一切、顔に出さず、
平 優香里を女将白百合薫が
自ら部屋へ向かって
案内して行った。
その時、
開けっ放しの廊下の窓から
サッと
女将の頬を風が通り抜けた。
それはまるで
女将の母親の白百合摩耶が、
薫のイタズラ心を少し
戒めているようでもあった。
女将の薫の心の中に
摩耶の声が聞こえてきた。
分かってると思うけれど、
銀太さんは貴女の幸せを呼ぶ
天使👼なんだらかね‼️
銀太さんを
絶対に手離しちゃだめだよ❗
貴女と銀太さんは
いわば、
2本の線路が何処までも
続いているような
運命共同体なんだからね🎵
一瞬、
サッとスレ違ったような
交差点ではないんだからね‼️
ママ❗
私はママの子供であり、
白百合旅館の女将よ‼️
その事は
私も充分承知しているわ🍀
女将の薫が心の中で呟いた。
すると、
摩耶が苦笑いしながら
薫に言った。
薫、イタズラも、
ほどほどにしておくのよ✨
平 優香里の前を歩きながら、
その言葉を聞いて
女将薫はクスリと笑った。
そのような女将の薫の姿を
姿の見えない
母親の摩耶だけが
見つめていた。
女将の後ろを歩いていた
平 優香里は風が通り過ぎた
窓の外に目をやった。
既に、夏の日射しが落ちて
夕方の落ち着いた風景が
広がっているのが見えた。
白百合旅館のロビーには
お客さんは
もう残っていなかった。
玄関の外からは
夏の蝉の声が聞こえていた。
その声は
まるで銀太の
歓喜と嘆きが
交じりあった声のようにも
聞こえていた。
(おわり)
この話は
バーチャル世界🌍️の話であり、ブログ世界🌍️の人とは
一切関係はございません。
此処まで
長い文章を
読んで頂きまして
ありがとうございます。
m(_ _)m